オーガニック野菜と有機栽培の基準

「オーガニック野菜」「有機栽培」「有機農業」「有機JAS」「無農薬野菜」「持続可能な農業」など、健康志向の高まりや、環境問題への関心もあり、このような言葉をよく見聞きするようになってきました。 「オーガニック」は「有機」と同じ意味になります。 「オーガニック(有機)野菜」とは、特定の基準に基づいて栽培された野菜のことで、ここでいう「特定の基準」とは、農薬や化学合成肥料などの「無機質肥料」を使用せず、植物性・動物由来の「有機質肥料」を使用して育てられた野菜のことを指します。 有機野菜の認定には農林水産省が定めた「有機JAS規格」に適合している必要があり、有機JASマークが付いた野菜がそれにあたります。 ※厳密に言えば、有機JASマークがない野菜は「オーガニック(有機)野菜」と表記できません。

オーガニック野菜と無農薬野菜の違い

また、「オーガニック(有機)野菜」＝「無農薬野菜」ではありません。 「有機JAS規格」の中に「禁止された農薬や化学合成肥料を使用しない」とあり、有機JAS規格に適合した農薬や資材が使用されている場合があるからです。 やはし農園では、有機JAS規格に適合した生産行程管理でオーガニック野菜を栽培しており、農薬も化学合成肥料も使用しておりませんが、農薬処理された種子や苗を使用する場合もあります。

農薬と化学合成肥料の適切な使用

私自身は従来の栽培方法(慣行栽培)や農薬、化学合成肥料を否定しておりません。 農薬や化学合成肥料をただ「悪」とするのではなく、本質的な部分をきちんと理解して、適切に使うことには賛成です。 使い過ぎや使い続けることが、自然環境や土壌に大きなダメージを与えることになります。 「無農薬だから良い」「無農薬だから美味しい」のではなく、きちんと栽培管理され、人の手が加えられるからこそ、本当に美味しい野菜が育つのだと思っています。

有機栽培の栄養価と環境への影響

とは言え、農薬や化学合成肥料不使用の有機栽培や自然農、自然栽培は、慣行栽培に比べて野菜の栄養価や土壌の健康状態を示す数値において、良い結果が出たりすることもありますし、何より身体が喜ぶこともデータ上では示されております。 他にも気候風土や適地適作、作付けのタイミング、施肥量、排水、灌水、そして土づくりなどなど、野菜作りには様々なことを複合的に絡み合わせ、判断していくことも重要です。先人の知恵と工夫を拝借し、培った日々の経験と様々なデータを生かしながら美味しい野菜作りに励みたいと思います。

持続可能な農業と生態系のバランス

「有機栽培」「有機農業」は、「持続可能な農業」とも言われ、自然環境への影響を最小限に抑え、土壌の健康状態を維持することに重点を置いた農法の一つです。 化学薬品に頼らずに害虫や病気に強い野菜を育てるためには、自然界の食物連鎖にみられるような捕食・被食による「いのちの循環」が必要になります。 水田や畑は多くの生き物のすみかになっており、多種多様な植物(雑草を含む)・作物を育てることによって、生き物が住みやすい環境を整えることも我々農業者の役割です。 もちろん生き物の中には野菜を食べる虫(害虫)もたくさんいますので、「すべてを良し」とすることはできませんが、それら生き物の死骸や糞、植物、作物の腐食が「微生物の働き」をより活性化させることになります。 微生物の働きによって土壌の栄養バランスや構造が保たれれば、農作物の自然な抵抗力を高めることができ、病害虫のリスクを減らしたり、病害虫に強い健康的な野菜を育てることができます。 ※鳥や獣による農作物への被害や自然災害による田畑への影響も深刻な問題です。

オーガニック野菜の消費者への影響

上記のようなことから、消費者の皆様にとってもオーガニック野菜を選ぶことは、ご自身やご家族、大切な方々への健康面での配慮だけでなく、自然環境を守る取り組みの一つでもあると言えます。 オーガニック野菜は、農薬や化学合成肥料の残留が少ないことから、栄養価も高く、より安心・安全であると言えますし、さらには生物の保護や土壌の健康促進に繋がり、自然環境に優しい選択をされていることになります。 有機農業は従来の栽培方法と比較して、栽培管理の面で手間暇がかかったり、価格が高くなる傾向にあります。 また、全てのオーガニック製品が一様に自然環境に優しいわけではありません。 地域によっては、せっかくのオーガニック製品であっても、長距離輸送で運ばれてくる場合もあり、オーガニック製品に限らず、地産地消や地場産のモノを選択することも自然環境への配慮に繋がります。

農業者としての使命と展望

最後に、「食」はその漢字の成り立ちからも分かるように、「人」を「良」くすると言えると思います。 私たちが欠かすことの出来ない「食」を担う農業者の一人として、皆様の健康づくり、健康維持に繋がるように、また自然環境に優しい持続可能な農業を伝え、広め、続けていくことで、将来の世代に対してより良い環境を残していけるように、皆様のご支援と共に歩んでまいりたいと思っています。